2月1日に辞意を表明した明石市長(c)朝日新聞社
2月1日に辞意を表明した明石市長(c)朝日新聞社

 市職員への暴言問題で2月1日、辞職願を提出した兵庫県明石市の泉房穂市長(55)。辞職を否定し、4月の市長選で3選を目指す意向を明らかにした会見から、わずか3日間で一体、何があったのか?

「まさか、あの録音で市長が辞任に追い込まれるとは、思いもしませんでした」

 明石市で立ち退きに関与していた職員は驚きを隠せなかった。

 なぜ、職員らは録音をとっていたのか。筆者が入手した泉市長の恫喝録音のすべてを聞くと冒頭に、「お、呼び出しや 行ってくるわ」と職員が泉市長から呼び出しを受け、説明に行くと周囲に知らせている会話があった。

 そして録音では、泉市長が「市民の安全のため、道路広げて。それが(担当者の)誇りや。しんどい仕事からせえよ。2年ものびるとその間、安全やない。言いたいのはそれや」と最後に一喝。職員らが部屋を出た後の「ひそひそ話」の会話も含まれていた。

「(市長が)火つけてこい、火つけてこい、座り込めってよう言いますわ」
「座り込めは、よくあるねん」
「許せんど、辞めたって許せん 担当者クビにせえ、と」
「(市長に)すんません、言ういうたら『すんませんで、すむ思とんか』かって」
 
 時折、笑い声も含まれていた。泉市長のモノマネのようなやり取りをし、職員同士がボケとツッコミのように笑いのネタにしているのだ。

 それについて、ある明石市の幹部はこう打ち明ける。

「泉市長がブチ切れて、わぁーわぁー言うのは、よくあること。もう幹部職員は、半分、慣れっこですわ」

 録音でも、「まあ最近、(泉市長の)言葉がきついのは、大変、あれかもしれませんが…」と職員がフォローすると、恫喝された職員が「いえいえ、きついのは慣れてます」と応じている。

 そして一部の職員たちは、泉市長の怒りについてこう理解しているという。

「ずっと、市長が言っていた安全対策事業やから安全を2年も延長する、あの危機意識は持たなあかん。安全にかかわるもの最優先や」

 恫喝された職員も「そこはほんま、ぐうの音が出んくらい正しい。(市長の)言われる通り」と認めていたのである。

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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2年近く前の録音が今、なぜ流出したか