気になるのは、医師たちの本音だ。「割に合わない」「お金持ちにはなれない」との不満が多数あがっている。

「医師の満足度の分岐は年収1500万円といわれています。1000万円未満の所得は、大学病院所属者が多いようです。技量や経験に、収入が比例しないため、不満もたまりやすいのではないでしょうか」(中村氏)

 A医師も言う。

「特に国公立の病院の場合、公務員に準じた扱いなのでアルバイトもできない。管理職になっても年収が1000万円を超えません。名誉と収入が一致しない、珍しい職業です」

 次に、貯金を見てみよう。収入に対して貯金額は、やや慎ましい傾向にある。A医師が言う。

「医師はランニングコストが高い。認定医や専門医の取得や維持のため、各地の学会に参加しますが、その費用や試験費用はたいてい自腹。大学院に進学すれば、学費がかかります。開業するなら、資金も必要です」

 開業費用は、立地にもよるが、ビルで5000万円、戸建てで1億円以上といわれる。

 生活水準が高いために出費も多いと指摘するのは、損保ジャパン日本興亜ひまわり生命のライフカウンセラーである戸田充俊氏だ。

「収入も多いですが、住宅費や生活費のほか、子どもの教育資金がかさむケースも多いため、なかなか貯蓄にまわらない世帯も多いようです」

 ひとつの勤務先に留まることが希で、転院することも多いため、退職金は通常の企業勤務のように期待できないことがほとんど。ただし、定年にも縛られないため、生涯現役で働く人が多いのも、医師の特徴だ。

※AERA Premium『医学部がわかる』(AERAムック)より