そもそもの始まりは、13年4月、趣味で造形をたしなむ地域振興課の小川知男係長(41)が、嶋田正義町長から「カッパを池から出せないかな。あなたそういうの好きでしょう。よろしく」という指示を受けたことだ。当時、町には可愛らしいカッパのキャラクター、フクちゃんとサキちゃんがいたが、小川さんは「どうせなら子どもが泣き出すほどの気持ちの悪いやつを作ろう」と考えたという。

 そうして出来上がったのが、高さ約1メートル、強化プラスチック(FRP)製のカッパだ。表面はべこべこ、長い髪の毛は1本1本植毛するという徹底ぶり。これを、大きな洗面器をひっくり返したような容器の上に置き、容器に複数の小さな穴を開けてコンプレッサーで空気を送り込むことで、浮き沈みさせることにした。

 当初は一カ月で100人来ればいいだろう、と思っていた小川さんだが、いざ設置してみると、カッパは町に“キモカワ”(?) ブームを巻き起こした。公園には連日多くの人々が訪れ、1日1000人という日もあったという。子どもたちの反応もよく、泣いて逃げ出す姿も見られた。

 カッパ象の人気を受け、町は14年8月、「全国妖怪造形コンテスト」を企画。天狗をテーマに作品を募集したところ、全国から113点が集まった。現在は、最優秀賞の作品をもとに、天狗象の制作が進められているという。それとは別に、町内で天狗を飛ばすという構想もある。

 さらに15年8月からは、2回目のコンテストを実施する。今回は「小豆洗い」や「山の神」「雪女」の三つの妖怪をモチーフにした作品を、10月末まで募集する。コンテストは海外からも注目されており、インターネットのフェイスブックページには、1日平均約1200アクセスのうち、香港や台湾といったアジアからのものが半数を占めるという。

 小川さんも、事務局のエキシビション作品を制作中。造形のすそ野を広げようと、8月12~14日には、小中学生を対象にした粘土で妖怪をつくる教室(無料)も開く。

 小川さんの個人的な趣味が開花したと言える妖怪まちおこしだが、一過性のものにしないためには、これからが正念場だ。小川さんは「カッパで終わらずに、妖怪を見たい人たちが福崎に来る仕掛けづくりをしたい。個人的には無料のテーマパークを目指しています」と話す。

 その気持ち悪さとすぐに消えてしまうがゆえに、また見たくなってしまうカッパ。筆者は結局、30度を超える暑さの中、3回、1時間以上も待ってしまった。今は亡き柳田先生の反応は、いかに。

(ライター・南文枝)

【カッパの動画はこちら】
https://youtu.be/Hix5SerE19g