経営コンサルタントという仕事は、クライアント企業の経営戦略に深く関わる仕事だ。文春報道によって、ショーンK氏が本当に経営コンサルタントとして仕事をしていたのか大きな疑問が沸き起こっているが、少なくともフジテレビの新番組『ユアタイム』がショーン氏をキャスターとして検討~決定した頃までは、世間的にもテレビ的にも「ショーンK氏は国際派の経営コンサルタント」だったわけだ。つまりフジテレビは、新しい(しかも社運を賭けた)報道番組のキャスターに経営コンサルタントを選んだ。しかし、そのこと自体が間違いなのである。

●コンサルタントが負う責任と倫理観

 CMキャラクターは企業や商品の「顔」でしかない。CM出演者が企業経営や商品に対して責任ある立場にあるわけでもないし、生活者もそこまで求めているワケではない。ケースにもよるが、企業が不祥事を起こしたり商品に欠陥があった場合に、CMキャラクターまでが責められることも(基本的には)ない。事実、シャープが経営危機に陥り、東芝が不正会計をしたとしても、シャープや東芝の広告に出ていたタレントやモデルに責任追及する人はいない。しかし、コンサルタント、特に経営コンサルタントはそうはいかない。

 最近、アメリカで30年以上、コンサルタントとして働いていた女性が『申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。』(大和書房刊)という本をリリースしたが、まさにコンサルタントが会社の方向性を狂わせ、結果として潰してしまうこともありえるのだ。それほどクライアントの経営に深く関わる経営コンサルタントが、報道番組、特にCM収入で成り立っている民放のニュース番組にキャスターとして登場するのは大きな問題だ。もし、自分のクライアントの競合他社が、自分の番組の提供スポンサーになったらどうするのかなど、職業倫理的に言っても問題がある。

 ショーンK氏の場合は、どうやら番組スポンサーになるような大企業をクライアントに持っている訳ではないようだが、それは結果論である。

 繰り返しになるが、コンサルタントとは、そのクライアントの企業秘密に大きく関わる仕事である。たとえば、メーカーの商品戦略構築を請け負った場合、そのメーカーの技術情報をかなりデリケートなレベルで知ることになる。現在開発中、研究中の技術はもちろん、これからどのような分野の研究に注力していくつもりなのか、ということも知る。これは企業戦略の根幹に関わる重要な機密だし、競合他社にじゃ絶対に知られたくない情報だ。

次のページ