小中学生向けニュース月刊誌「ジュニアエラ」6月号では「子どもが使える法律」を特集。憲法と法律はどこが違うのだろう? 「明日の自由を守る若手弁護士の会」に所属する、竪十萌子弁護士が解説してくれました。

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 法律と憲法は、性質がまったく異なるんだ。

 憲法には、国家を成り立たせるルールが書いてある。主権者は誰か、国民はみな平等と考えるか、戦争をする国か、政治を行う人(国家権力)には権力が集中するけれど、それを分散させたほうがいいと考えるのか……。

 日本国憲法では、主権者は国民と定めている。誰もが法の下に平等で、一人ひとりの考え方や行動は、それぞれ尊重されるべきだと書かれている(基本的人権の尊重)。国家権力の担い手に権力が集中すると独裁国家になりがちだから、権力を三つに分散させている(三権分立)。つまり、憲法は、国家権力の担い手を縛るルールだ。

 一方、法律には、国民同士の決めごとが書かれている。みんなが平等で、自由に権利を主張すると、考え方や立場の違いから、もめごとが起きることがある。力の強い人が弱い人の権利を奪うという不平等も起きかねない。そんなとき、どちらの権利も守られ、納得がいくような基準を示す役目を法律は果たすんだ。

 憲法は法律の親分。憲法の考えと合わない法律は作ってはいけないと憲法で定められていて、疑わしい法律は裁判所が違憲立法審査をしてチェックするよ。 

 新法や改正法の成立は、みんなの暮らしに大きな影響を与えている。たとえば昨年、消費税率が8%から10%に上がったのは消費税法が改正されたから。2022年4月から成人年齢が20歳から18歳に引き下げられるのも民法改正によるもの(18歳成人)。

 今年3月には、新型コロナウイルスの感染症が国内で爆発的に拡大する局面になったら首相が緊急事態宣言を出して、国民の権利を制限できる法律も成立。4月に全都道府県に、緊急事態宣言が発令された。一時的とはいえ、国家権力を担う人が「憲法のオリ」から出て強力な権限を発揮できるようになる。憲法で保障された国民の権利が、なし崩し的に侵害されないよう、十分、気をつける必要があるんだ。

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AERA編集部
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