前出の業界団体担当者も、手作りマスクについてこう話す。
「顔にフィットする立体マスクができれば一概にダメだとも言えないが、ハンカチなどを使うと顔への密着性はあまりなさそうです。やらないよりやった方がよいという程度でしょう」
国などは今回の問題を受けて、ホームページに国民向けの「マスクについてのお願い」を公表、使い捨てマスクがないときには「代用品を使おう」と呼びかけた。ガーゼマスクやタオルなどを使うと効果があるとしている。
だが、そもそも世界保健機関(WHO)では、マスク自体、症状がなければ過度に利用する必要はないとしている。
医療ガバナンス研究所の上昌広理事長はこう指摘する。
「WHOは医学的な立場で考えを表明しています。知識のない人がマスクを使っても予防効果はないというのが、現状のコンセンサスです。日本の場合は、エチケットの問題を含む総合的な判断があるのでしょう」
再利用や手作りマスクの是非についても上理事長は懐疑的だ。
「自宅で一般の人がアルコールできっちり消毒するなど、現実的ではないと思います。手作りマスクに関しても、効果ははっきりしません」
東京医科大学病院の濱田篤郎教授(渡航医学)もこう話す。
「再利用はやめた方がいいと考えます。そもそも症状のない人にマスクは一般的には必要がありません。少なくとも、症状がある人はマスクを再利用しない方がいいということは言える」
マスクがない不安から、あれこれと試したくなる気持ちは自然なものだ。ただ、立ち止まって考える必要もありそうだ。濱田教授は指摘する。
「そうした労力をかけるよりも、手洗いを徹底したり、顔を頻繁に触らないように気を付けたりする方が、有効だと知っていただきたい」
(編集部・小田健司)
※AERA 2020年3月16日号