名古屋市で性被害やセクハラ問題を扱う弁護士の岡村晴美さんはこう話す。

「弁護士や裁判につながる事例として、教員から保護者へのセクハラ問題は多くないと感じる。ただし、そういう問題がないからではなく、あったとしても被害を申告しにくいという側面もあるのではないか」

 そもそもセクハラ被害は、証拠が残りにくい、被害者が自分を責めてしまう、二次被害があるなど、法的手続きに進みにくい理由が多々ある。

「学校が期間限定であることも、卒業するまで耐えればいいと泣き寝入りになりやすい理由かもしれない。大切なわが子を巻き込みたくないという心理に陥りやすい」(岡村さん)

 同じ心理状態だった冒頭の被害女性を救ったのは、ママ友の行動力だった。

「被害を受けたのに泣き寝入りさせては、いじめを見て見ぬふりするのと一緒。子どもに親として胸を張れない」

 被害届の不受理を疑問視した、前出の1年生の息子を持つ母親は、一人で県警を訪ね、被害届が受理される道筋を作った。少数だが、協力を申し出る親も現れた。

 そうやって書類送検までこぎつけたが、起訴に持ち込むことは難しそうだ。

「でも、追及をあきらめるつもりはありません。次は教育委員会に現状を知ってもらいたい」

 と、被害を受けた女性は闘う姿勢を崩さない。(ライター・島沢優子)

AERA 2019年12月30日-2020年1月6日合併号より抜粋