ジーンズショップ・スズヤのジーンズ売り場。店主の青山さんは「ジーンズ好きな若者が減った」と話す(撮影/編集部・小田健司)
ジーンズショップ・スズヤのジーンズ売り場。店主の青山さんは「ジーンズ好きな若者が減った」と話す(撮影/編集部・小田健司)
ジーンズの売れ行きの変化(AERA 2019年11月11日号より)
ジーンズの売れ行きの変化(AERA 2019年11月11日号より)
1世帯(2人以上世帯)あたりの洋服にかける年平均のお金(AERA 2019年11月11日号より)
1世帯(2人以上世帯)あたりの洋服にかける年平均のお金(AERA 2019年11月11日号より)

 若者を中心にジーンズの売れ行きが落ちている。中でも、最もメジャーな価格帯の1万円以下が売れないという。かつて「若さ」や「自由」の象徴だったジーンズの人気が低迷しているのはなぜか。AERA 2019年11月11日号に掲載された記事を紹介する。

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「全国のユニークな顔をした芸能人のみなさん、ユニークな体形をした芸能人のみなさんに、夢と希望を与えられた」

 10月15日に東京国際フォーラムであった今年の「ベストジーニスト賞」の発表。オーバーオール姿で登場した出川哲朗さんは冗談交じりにこう話し、拍手を浴びた。受賞したのはほかに、長谷川京子さんや山本美月さんら。毎年恒例のにぎやかなイベントで盛り上がったが、実はジーンズ業界は今、危機にある。

 東京都品川区の中延商店街。青山智紀さん(46)は、この商店街にある「ジーンズショップ・スズヤ」を26年前に父から継いだ。

「一番買いに来るのはジーンズブームを経験している70歳前後の男性。一番買いに来ないのは、30代より下の学生を中心とした層でしょうか。一昔前と比べても、全然来ないですね」

 スズヤで扱うのはメンズでエドウイン、リー、リーバイスの3ブランド、レディースではスウィートキャメル、ミスエドウインの2ブランド。購入しやすい7千円前後の商品を中心にそろえている。しかし、ジーンズの売れ行きは順調ではない。

 先代の父親のころはほぼジーンズだけの商売だったが、今はアロハシャツやTシャツなども取りそろえて店を維持している。ジーンズに限って言えば、売り上げは20年ほど前に比べて半分程度になっている。

 ジーンズは、ゴールドラッシュにわく19世紀の米国で生まれた。当初は主に作業着として使われていたと言われるが、徐々に若者のファッションとして定着。ハリウッド映画の影響も大きかったようだ。

 映画「乱暴者」(1953年)で暴走族のリーダーを演じたマーロン・ブランド。映画「理由なき反抗」(55年)で屈折した若者を演じたジェームス・ディーン。2人のジーンズ姿は、ジーンズを「若さ」や「自由」の象徴とする空気感を作り出した。

 国内で生産が始まったのは60年代になってから。70年代にはすそが広がる「ベルボトム」が大流行。80年代には、「ケミカルウォッシュ」と呼ばれるまだら模様もはやり、ジーンズはすべての世代に愛されるアイテムの一つになった。

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