韓国陸軍は人員49万人で、米陸軍の46万7千人を上回り、陸上自衛隊の3.6倍だ。戦車2500両、装甲車3300両、ヘリコプター595機を保有、西欧諸国の陸軍なみに近代化している。在韓米陸軍は1989年には3万1600人いたが、今では1万9千人に減らした。これは韓国軍が通常戦力では圧倒的優位だからだ。

 冷戦時代のイデオロギーがなお残る日本では「韓国は味方」という感覚があるから、韓国軍の増強が報道されることは少ないが、韓国はすでに軍事大国であり、日本を仮想敵としていることを認識するべきだ。

 経済でも韓国のGDP(16年)はロシアの1.2兆ドルをしのぐ1.4兆ドル。1人あたりGDP3万2千ドルは日本の78%だが、物価を加味した購買力平価では日本の94%。23年ごろに日本を抜くとみられている。韓国の今年の国防予算は46.7兆ウォン(約4兆円)で日本の76%だが、韓国の中期国防計画(5年)では年率7.5%ずつ増やすとしており、23年には今年度の日本の防衛予算を上回りそうだ。

 今回韓国がGSOMIAの終了を通告したことで、日韓の直接の情報交換は11月23日から停止となるが、協定が締結された16年以前の状態に戻り、米軍経由で情報が伝わればあまり支障はなさそうだ。韓国が「GSOMIAは終了した。日本に情報を流すのはけしからん」と米国に抗議することは考えにくいし、それは日本も同じだろう。

 GSOMIAで機密の軍事情報を交換するのは准同盟国関係とも言える。米国は日韓が緊密となり、日米韓の連携で北朝鮮に圧力をかけることを期待していただけに、それを韓国が切ったことに怒ったのも当然だ。

 だが韓国人の多くは日本との軍事協力に反対で、韓国軍は日本を仮想敵として装備を整え、毎年2回は「独島」防衛の演習をしているのだから、GSOMIAを両国に結ばせてもうまくいくはずはなかった。並んで生えた2本の竹を接着剤で無理にくっつけるようなもので、いずれ接着が外れるのは宿命だったと言えるだろう。(軍事ジャーナリスト・田岡俊次)

AERA 2019年9月9日号