実習生が入国前に学ぶ日本語教育施設は全寮制だ。ある送り出し機関の施設の寮を見学した。部屋に詰め込まれた2段ベッドにはうすいござが敷かれていた(撮影/ジャーナリスト・澤田晃宏)
実習生が入国前に学ぶ日本語教育施設は全寮制だ。ある送り出し機関の施設の寮を見学した。部屋に詰め込まれた2段ベッドにはうすいござが敷かれていた(撮影/ジャーナリスト・澤田晃宏)
国・地域別ベトナム人労働者送り出し数<2018>(AERA 2019年7月29日号より)
国・地域別ベトナム人労働者送り出し数<2018>(AERA 2019年7月29日号より)

 ベトナム人技能実習生は、現地の送り出し機関に多額の手数料を払う形で、日本側の機関や団体の接待や裏金までも負担している。ゆえに、他国に比べて日本で働くことは、お金がかかり過ぎるのが現状だ。そんな中、若年層のベトナム人たちは韓国への関心を高めているという。一体なぜなのか。ジャーナリスト・澤田晃宏氏がリポートする。

【図表】日本はダントツ!他には…?ベトナム人労働者の渡航先 国別の送り出し数はこちら

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ベトナムからの渡航先は、18年に日本が6万8737人でトップになった。次点の台湾とは僅差だが、

「台湾はビザの取得が簡単で、10年以上働けるが、給料が安い。台湾を目指すのは日本では採用されない30代以上の人が多い」(送り出し機関幹部)

 ただ、アジア圏に限らず、ドイツやルーマニアなど欧州の国々もベトナム人労働者の採用を始めている。現状では、他国に比べ、日本で働くにはお金がかかり過ぎる。日本が「働きたい国」であり続けるためには、不透明なお金を排除する必要がある。

 ハノイ市内の韓国語学校を訪ねた。学長のグエン・クアン・ドックさん(32)が誇らしげに言った。

「20代半ばより上の世代はドラゴンボールやワンピース、名探偵コナンが大好きで日本への憧れが強い。一方で今の10代はK‐POPの影響で韓国への憧れが強い。しかも日本より稼げる」

 韓国は日本の技能実習制度を参考に1993年から単純労働分野の外国人の受け入れを始めたが、日本が現在抱える仲介業者のピンハネや非人権的な働かせ方が問題になり、04年からは労働者として受け入れる「雇用許可制」を導入した。国が業種ごとの受け入れ数を割り振り、国の機関同士で採用を行うため、ブローカーが入る余地がない。

 韓国の雇用許可制で働く場合、失踪防止の目的で約4千ドル(約45万円)の保証金を預ける必要があるが、手数料は約630ドル(約7万円)だ。転職が認められており、企業も待遇をよくしなければ人材を確保できない。そのため、寮などが無償提供されることも多く、実際に手にできるお金は日本の技能実習生よりも高いことが多い。

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