集会所で出会った在日コリアン2世の男性は「自分たちの代でこの問題を解決して、次の代に街を引き継ぎたい」と言う。また、3世の女性は「色々と問題があっても住み続けているのは、この街が大好きだから。ネットでは『池上町は怖い街だ』なんて書かれているけど、鍵をかけなくてもいいような安全な街なんですよ」と微笑んだ。

 戦前から戦後にかけて、荒れ地に住まざるを得なかった在日コリアンの歴史を踏まえずに、「不法占拠」だとみなし、土地を取り上げようとしているのだとしたら問題だ。

 JFEスチールに、池上町への対応について尋ねたところ、「土地の売買や賃貸に関して住民と個別の相談はしない。今後は行政と連携して、コインランドリーの跡地のような管理地を増やしていく考えだ」と地区の担当者から返ってきた。ただし、「土地の明け渡しを求める通知書は空き家だと認識したところに送っている。まだ住んでいたのなら手違い。それについては個別に話し合いたい」と話す。

 こうした現状に対して、三浦さんは言う。

「住民は住民税を払って池上町に住んでいるのに、土地所有の問題によって公共の福祉の枠外に置かれてしまっているのだとしたら、そこには行政の責任も当然ある。歴史的な経緯を踏まえ、改めて行政とJFEが住民と向き合い、土地と生活環境の問題を改善していかなければなりません」

(ライター・磯部涼)

AERA 2019年3月18日号