「経済事件や汚職事件など特捜の捜査の端緒は国税局からもたらされることがほとんど。実際に大阪地検特捜部と大阪国税局では毎月1回、『勘案協議会』という名称の会議があり、国税側から刑事告訴予定の案件の一覧表を渡して日程調整も含めた検討会をするのです。特捜部から出席するのは副部長一歩手前のエリートで、税務大学校に派遣されて公認会計士資格や専門知識を身につけた財政担当検事と事務官のコンビです」(司法ジャーナリスト)

 打ち合わせも兼ねて食事や酒席も共にするので連係プレーもスムーズになるが、捜査の対象が前国税庁長官とあれば、それこそ忖度(そんたく)で矛先が鈍りかねない。しかし、2月末に就任したばかりの大阪高検の上野友慈検事長(60)は大阪地検で検事に任官、特捜時代はイトマン事件なども手がけ、大阪地検検事正も務めた大阪の事件捜査の顔だ。連日、部下に発破をかけ、士気が高まっているという。

「神戸、京都、和歌山の各地検からも検事や事務官の大量応援を受け、財務省本省職員の調べは東京で行っています。同時に職員のメモからパソコンのハードディスクに至るまで、近畿財務局や本省の職員からは徹底的に任意提出で証拠収集しているので、家宅捜索に頼る必要がないほど。事情聴取に呼ばれた佐川氏が証人喚問のような調子でまともな調書も取れないようなら、早々に身柄を拘束して強制捜査に切り替えるでしょう。遠慮する気配はゼロです」(同前)

 大阪地検特捜部は8年前、自らが証拠品改竄事件で当時の幹部ら検事3人が逮捕され、検察の威信を失墜させた。証人喚問で払拭(ふっしょく)できなかった国民の疑問を解明することでしか、信頼回復の道はない。(編集部・大平誠/ジャーナリスト・村上新太郎)

AERA 2018年4月9日号