だが、くすぶり続けた不満が頂点に達したのか、今年の課題曲や「Nコン」のあり方に疑問を呈した田久保さんのブログに、教員や音楽関係者、生徒らからも同感の厳しい意見が多数寄せられた。「人気取り主義、視聴率主義が見え見え」「音楽的価値の低い楽曲を生徒に与えていいのか」「中学生を甘く見ないで。コンクールを甘く見ないで」

 今回の「願いごとの持ち腐れ」を3月、AKB48がテレビ番組内で披露するや、SNS上でも議論が沸騰した。けなげに歌う姿には共感が広がりつつも、ファン内では評価が分かれている。

 人気合唱曲「君とみた海」などで知られ、NHKの音楽番組でも活躍してきた作曲・編曲家、若松歓さんも、参考音源を聴いて驚いた一人だ。

●本来の理念と相いれぬ

 日本語の抑揚と音の上がり下がりが合っておらず、詞への違和感もぬぐえなかった。詞と曲の雰囲気の違いも感じたという。

「取り組む子どもたちが、これではかわいそう。番組制作者の理念が、教育でなく視聴率のためであるなら許されない」と若松さんは語気を強める。

「握手券付きCDを売るという商法と、Nコンの本来の理念とは、到底相いれない」

 主催者のNHKの見解は、

「ふだんから多くの中学生が親しんでいるポップス系の課題曲を作ることによって、より多くの生徒たちに合唱に興味を持ってもらいたいと考えております。コンクールの参加校数は、平成に入ってから減少の一途をたどっていましたが、回復に転じています」(NHK広報局)

 前出の田久保さんは意見を集約し、「課題曲を選択制に」「諮問機関の設置」などの要望とあわせ、4月中旬にNHKや文部科学省などに意見書を提出する予定だ。(ライター・加賀直樹)

AERA 2017年4月17日号