「日焼け止めは塗ったほうがいいと思うけれど、子どもは過って水を飲んでしまうことも多い。安全のために使用を認めていないという学校の説明を聞いて、一理あるなと思いました」

 一方で、制限を緩める学校は増えつつある。

 川崎市教育委員会は今年4月、各学校に「耐水性であれば日焼け止めの使用を認めるように」と通知。48歳の男性教諭が勤務する市内の小学校でも、

「市教委の通達を受け、保護者の申請があれば使用を許可することになりました」

 意外だったのは、この男性教諭がこんな話をしたことだ。

「私自身や周囲の教員仲間が、保護者から日焼け止めの相談を受けたことはないんです。保護者は、考えていることをなかなか伝えてくれないんですよ」

 実際、さいたま市で2人の子どもを育てる女性(47)は、

「日焼け止めを塗っていいかと先生に質問したらダメと言われそうだから、プールのある日はこっそり家で塗っていた」

 と話した。

 保護者は学校とのコミュニケーションをあきらめているということだろうか。

 冒頭の女性は相談を重ねることで、「ラッシュガードに関しては個別に相談すればOK」の回答を引き出した。その後、担任が「こっそり塗ってきてもいいですよ」と耳打ちしてくれて、水泳の授業のある日の朝はウォータープルーフの日焼け止めを塗って送り出している。

 日焼け止め問題の陰に、コミュニケーション問題あり。双方、子どもの健康を考えてのことなのだから、話し合えばきっとわかる。(ライター・松田慶子)

AERA 2016年8月1日号