AIはどう人間を助けてくれるのか…(※イメージ)
AIはどう人間を助けてくれるのか…(※イメージ)

 失敗を乗り越えてこそ人生。それも真実だが、大きな痛手を負う事態は避けて通りたいのも事実だ。

 人間が進化させてきた技術で、失敗を未然に防ごうという研究が進んでいる。

 ただいま、世は3度目の人工知能ブーム真っただ中。グーグルの囲碁AI「AlphaGo」がプロ棋士に5戦4勝したことも記憶に新しい。「プロに勝つには、あと10年はかかる」という予想を覆す圧勝に、世界が驚いた。そんなに賢くなっているなら、人間の失敗も防いではくれないものだろうか。

 ひと口に「失敗」といってもその種類はさまざま。ヒューマンエラーの専門家である立教大学現代心理学部の芳賀繁教授によれば、人間を情報処理装置と考えた場合、入力、判断、出力、それぞれの過程で失敗が起こり得る。脳が情報認識を間違える見間違い・聞き間違いなどが入力ミス、認識をもとにした思考過程、記憶や知識、経験の欠如や不足に伴う間違いが判断ミス、実際の動作の段階で間違えてしまうのが出力ミスだ。

●疲れや判断の遅れなし

 それぞれの過程で、AIはどう人間を助けてくれるのか。

 まずは、入力について。

 右下は、歩行者、車両、標識、車線などを識別する車載用ソフトウェア開発を進めているフィーチャ社のデモ画面だ。検出した歩行者や車両がマークされ、リアルタイムで動きを追いかけていく。同時に、対象物までの距離もわかる。距離と走行速度がわかれば、障害物と衝突するまでの時間も計算できる。

 フィーチャでCTOを務める曹暉(ソウキ)さんは、理化学研究所、豊田中央研究所などで画像認識、歩行者検出の研究に携わってきた。この識別技術と自動ステアリング操作とを組み合わせれば、将来的には、事故の危険を回避できると自信をのぞかせる。

「機械は、人間にありがちな、長時間運転での疲れや判断の遅れ、よそ見などのミスはありません。処理が速いし、感情的になることもありませんから」

 しかし、アメリカでは先日、「オートパイロット」(高度運転支援)機能を搭載したテスラモーターズの電気自動車が死亡事故を起こした。前方を横切るトレーラーを認識できなかったとされている。実際、機械はまだまだ誤認識も多く、人間とマネキンを見分けるのも難しい。人間の目や脳による認識の柔軟性には及ばないのだが、AIに詳しい野村総合研究所の古明地(こめいち)正俊さんによれば、

「ディープラーニングと呼ばれる機械学習技術の進化で、画像や音声に関しては高い認識率が得られるようになっています」

 音声認識なら、スカイプの同時通訳機能である「Skype Translator」や、iPhoneの「Siri」。画像認識では、東京五輪のエンブレム問題で話題になったグーグルの類似画像検索がそれにあたる。

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