自民党の宣伝カーの周りでは、改憲PR漫画が配られた/2015年5月、東京・有楽町 (c)朝日新聞社
自民党の宣伝カーの周りでは、改憲PR漫画が配られた/2015年5月、東京・有楽町 (c)朝日新聞社

「改憲」といえば、9条ばかりに目がいくが、論点はほかにもある。自民党の改正草案を見ると、改憲でこの国の形がどうなるかが見えてくる。

 自民党の改正草案には規定が新設された条文がいくつかあるが、その一つが24条だ。自民草案では第1項に「家族は、互いに助け合わなければならない」という規定を新たに設けた。草案Q&Aでは、「昨今、家族の絆が薄くなってきていると言われています。こうしたことに鑑みて」と、理由を説明。さらに、「党内議論では、『親子の扶養義務についても明文の規定を置くべきである』との意見もありましたが、それは基本的に法律事項であることや、『家族は、互いに助け合わなければならない』という規定を置いたことから、採用しませんでした」と書いてある。

 そもそも、「昨今」の家族のカタチで最も多いのが一人暮らしだ。10年の国勢調査では単独世帯が32.4%を占めた。それ以外にも同性婚や事実婚、シングルで出産、LGBTカップルなど家族の形態も機能も多様化してきているが、自民草案はその変化を逆戻りさせるものだ。

 安倍首相の著書『新しい国へ』の中にはこんな記述もある。

「『お父さんとお母さんと子どもがいて、おじいちゃんもおばあちゃんも含めてみんな家族だ』という家族観と、『そういう家族が仲良く暮らすのがいちばんの幸せだ』という価値観は、守り続けていくべきだ」

 昨年2月の参院本会議で、安倍首相は同性婚について「現行憲法の下では、同性カップルに婚姻の成立を認めることは想定されていない」と答弁。また、昨年12月、夫婦が同じ姓を名乗る民法の規定について、最高裁大法廷は「合理性があり合憲」とする初の憲法判断を示し、選択的夫婦別姓も認めなかった。

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