「酔っぱらってきたからお風呂に入る」とバスルームに向かった一人が、大きい浴槽に歓声を上げているのが聞こえる。サービスで人数分もらったコスメセットで化粧を落とした女子もいる。テーブルの上はスナック菓子や飲み終わったワインボトル、汚れた料理の皿が散乱しているが、「だれかの家での飲み会」のときのように、片づけを気にしなくていいのも居心地がよい。

 帰りも、三々五々。朝11時までOKなので、泊まっていく女子もいる。「ぐっすり寝て、出社」というメールが、泊まり女子から翌朝届いた。

 インターネットの検索エンジンで「ラブホ 女子会」と入力すると、出るわ、出るわ。シャンパン1本プレゼントやリムジンクルーズ付き、有名メーカーのコスメグッズ、美顔器のレンタルなど女性が喜ぶアメニティーを提供するところもある。

 後ろめたいような、秘密めいたようなイメージをラブホテルに対して描く世代は古いようだ。ラブホテル評論家の日向琴子さんは「この数年、多くのラブホテルがユーザー目線をより大切にするようになった。ホテル側とユーザー側の距離が近くなり、身近な存在になっている」と話す。

 その結果、進んでいるのが多様化だ。

「独自の強みを打ち出し、個性を売りにするホテルが目立つようになりました。予約ができるようになり、女子会をはじめ、様々な層のニーズに応えています」(日向さん)

(ライター・羽根田真智)

AERA 2016年3月21日号より抜粋