「保湿が不十分だと、皮膚のバリアー機能が低下します。皮膚からアレルゲンが侵入してIgE抗体がつくられ、次にアレルゲンが入るとアレルギー症状が現れます。皮膚から入るとアトピー性皮膚炎、鼻からだと花粉症、のどからだと気管支ぜんそくになるのです」


 
 11年に社会問題となった「茶のしずく石鹸」は、皮膚から小麦の成分が入り込んだことが原因だ。逆にいうと、皮膚のバリアー機能さえ保たれていれば、アレルギー症状を予防できる。

 同センターで、一日1回保湿剤を全身に塗布した新生児(59人)と、乾燥した局所のみワセリンを塗布した新生児(59人)を比較した結果、全身を保湿した新生児はアトピー性皮膚炎の発症率が3割以上低かった。

「IgE抗体のできていない生後6カ月までを目安に、しっかり保湿することがアレルギー予防に大切です」(斎藤医師)

 アトピーは、成長とともにぜんそく、花粉症などほかのアレルギー疾患が連鎖的に起こる「アレルギーマーチ」の起点だ。乳児期に十分なスキンケアを行うことで、先々のアレルギーを予防できる可能性もある。

(ライター・越膳綾子)

AERA 2016年3月7日号より抜粋