「除去食をがんばっている子どもの中には、真穂ちゃんのようにその食べ物に対するアレルギーはなく、本当は食べられる子がいっぱいいます。外来に初診で来る患者さんの中にも、そういう子どもたちが少なくありません」

 こう話すのは、昭和大学講師の今井孝成医師だ。

 真穂ちゃん親子のような「無駄な除去」をしてしまう最大の原因は、血液検査や皮膚テスト(アレルゲンとして疑われる物質を皮膚に直接付けて反応を見るプリックテストなど)の結果だけで、アレルギーと決めつけてしまうことだ。この段階で、医師に除去を指導されるケースも多い。

「これらの検査は『食物アレルギーの疑い』を示しているにすぎない。血液検査で陽性となったことで除去してしまうと、子どもの成長に必要な栄養までも奪いかねません。本当に除去が必要な食物を特定するためには、『食物経口負荷試験』が不可欠です」(今井医師)

 食物経口負荷試験は、原因と考えられる食物を食べさせて反応を見る検査だ。この試験をすれば、「その食物に対して本当にアレルギーがあるか」に加えて、「どの程度(量)なら食べられるか」もわかる。血液検査で陽性と出ても、食物経口負荷試験で陰性になることは珍しくないという。

「原因食物によって違いますが、成長とともに免疫や消化吸収のシステムも成熟するので、鶏卵、牛乳、小麦、大豆は3歳までに5割、6歳までに8~9割は自然な経過の中で治って、食べられるようになります。食べると症状が誘発される食物は除去しなければなりませんが、最初は除去が必要でもずっと必要なわけじゃない。そのためにも、定期的に食物経口負荷試験をして確認すべきなのです」(同)

(ライター・谷わこ)

AERA  2016年3月7日号より抜粋