「ガールズトークが苦手」女性のアスペルガー症候群 複雑な悩み

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(更新 2015/11/27 11:30)

的確にアスペルガー症候群の診断ができる医師や医療機関は、まだ限られている。社会性が比較的高い女性は、症状が目立たないために支援が遅れることがあるという(撮影/写真部・岡田晃奈)

的確にアスペルガー症候群の診断ができる医師や医療機関は、まだ限られている。社会性が比較的高い女性は、症状が目立たないために支援が遅れることがあるという(撮影/写真部・岡田晃奈)

どんぐり発達クリニック院長宮尾益知医師専門は発達行動小児科学、小児精神神経学、神経生理学。発達障害の分野では日本の第一人者。2014年に同クリニックを開院(撮影/写真部・岡田晃奈)

どんぐり発達クリニック院長
宮尾益知医師

専門は発達行動小児科学、小児精神神経学、神経生理学。発達障害の分野では日本の第一人者。2014年に同クリニックを開院(撮影/写真部・岡田晃奈)

女性のアスペルガー症候群

宮尾益知監修
定価:1,404円(税込)

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 男性に多いといわれていたアスペルガー症候群。だが、最近、女性にも少なくないことがわかってきた。患者たちは、時に男性より広く、深い、複雑な悩みを抱えている。

「なんか、お化けみたいな、未確認物体みたいなものに対する恐怖なのかなあ」

 対人関係が苦手だという女性(23)は、自身の感覚をこんなふうに表現した。

 ある国立大学の大学院修士課程で、ゲームの人工知能を研究している。笑顔が印象的で、一見、普通の女の子。だが、話し方は少し幼く、取材中は、記者と目を合わせることがほとんどなかった。

「怖いから、あまり(目を)合わせたくないなぁ、という……」

 母親(54)によれば、この女性の場合は言葉を話し始めるのが遅く、2歳くらいまでは指さしで「これ」としか言わなかった。3歳のころは多動気味。言葉をしゃべるようになると、同じことを何度も何度も聞いてきた。小学生時代には、今で言う「KY(空気が読めない)」だとされていじめが始まり、「汚い」などと無視された。小学6年生の時、見かねた母親が専門医に連れていき、「アスペルガー症候群(AS)」と診断された。

 ASは発達障害の一つで、生まれながらの脳の機能障害が原因とされる。これまでは、主に男性に起こり、男女比率は9対1だとされてきた。

 だが、「どんぐり発達クリニック」(東京都)の宮尾益知院長によれば、同クリニックでは男性2、女性1の割合で、女性のASも少なくないという。長年にわたり発達障害の患者の診察を続け、3月に『女性のアスペルガー症候群』(講談社)を出した宮尾医師はこう話す。

「女性の場合、男性よりは社会性が育ちやすく、集団の中でそれなりに活動できることが多いため、周囲に気づかれにくかったことが原因とみられる。結果として、一人で悩みを抱えてしまう傾向があります」

 AS患者は友だち付き合いや集団生活が苦手なため、対人関係の構築や意思疎通などに悩むことが多い。それが女性の場合は、男性よりも広く、深く、複雑であることが多いという。

 女性のASの際立った特徴として大きいのは、中学から高校の思春期におけるガールズトークについていけないことだと宮尾医師は言う。

「アスペルガー症候群の人は、自分の趣味ややり方にこだわる一方、人の話に興味がもてない傾向がある。それが、女性の患者では『おしゃべりスキルの低さ』となって表れます。女性は他愛のないガールズトークによって人間関係を築いているところがありますよね」

 やがて、友だち付き合いそのものがうまくいかなくなり、いじめや無視につながる。本人は、周りが自分に対しネガティブメッセージを出していることに気づいて「変だな」と感じても、なぜそのメッセージが発信されているのかを理解できない。

 暗黙の了解や、相手の怒りを読み取るといった、非言語的なコミュニケーションが苦手だからだ。

AERA  2015年11月30日号より抜粋

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