天才肌の道脇さんは学校の授業はほとんど受けず、漁師やとび職といった仕事も経験しながら独自の発明を続けてきた。L/Rネジのアイデアは18、19歳のころ、マイカーを運転中にタイヤのナットが緩んで脱輪し、危ない思いをした後に「ぱっとひらめいた」。

 自分自身のアイデアをビジネスに結びつけることには熱心ではなかったが、後年、自然と集まった企業経営者などの支援者たちに「発明が頭の中にあるだけではもったいない」と勧められ、09年にNejiLawを設立した。

「ネジはありとあらゆるところに使われています。緩まないネジの社会的な影響は大きい」

 橋や鉄道のレールといったインフラ、自動車や航空機のネジが緩めば大事故につながりかねない。高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の原子炉容器内に重さ3.3トンの燃料交換用の装置が落下した10年のトラブルも、ネジの緩みが原因だった。L/Rネジはこうした分野で安全性を高め、機械などのトラブルの確率を下げることを期待されている。高度成長期につくられたインフラの老朽化に伴い、負担の重さが改めて注目されているメンテナンスの手間や費用も大きく減らせそうだ。

AERA 2015年8月24日号より抜粋