追い打ちをかけるように、カブはアトピー性皮膚炎を発症。かゆみや思いどおりに動けないことへのストレスでカブがイライラする様子を見て、奈美さんは心が沈むこともあった。
しかし、カブの介護やアトピー性皮膚炎の看病がきっかけで、自宅を職場に、犬や人のためのサプリメント販売の会社を立ち上げることになった。
「やりがいのある新しい仕事を得られたのは、カブのおかげ。仕事やブログなどを通して、犬の看病や介護で困っている方に、自身の体験で得た知識を伝えられるのもうれしい」
向井夫妻や菅原夫妻のように、転居や起業をして、自分でペットの介護ができる飼い主ばかりではない。
「月に数件は、犬の介護を依頼したいという問い合わせがあります」と語るのは、東京都中央区と群馬県で、犬の終生預かりを行う施設「ドッグライフプランナーズ」の岸良一さんだ。
老犬の認知症が原因で、「仕事から帰宅すると、室内を徘徊していた犬が、家具などにぶつかってケガをしていた」「夜鳴きがひどく、集合住宅の近隣住民にも迷惑がかかっているかもしれない」などと、悩む飼い主も少なくないという。
「自分の限界ギリギリまで介護をがんばっている飼い主が多いですね。けれども、入所した犬たちが、介護のノウハウを心得たスタッフと打ち解けて元気に過ごしているのを面会時に見ると、ほっと肩の荷が下りたような表情をされています」
実際に、群馬県の水上温泉にある施設では、温泉浴をしたり、屋外や室内の広いドッグランで遊んだりするうち、元気を取り戻す犬もいるそうだ。
●プロの手を借りる
「仕事で留守にする日中、犬や猫の介護をペットシッターに依頼する飼い主も増えています」と、20年以上にわたりペットシッターサービスを行っている、「留守番わんにゃん」の山口照代さんは語る。飼い主の依頼により、床ずれを防止するために体の向きを変えたり、おむつ交換を行ったり、点滴や投薬といったケアを行う。
「老齢のペットの世話の方法や環境の整え方を知らない飼い主さんに、アドバイスをさせていただくこともあります。たとえば、足腰が弱ってペット用トイレをまたぐことが困難になった猫のトイレの設置法や、白内障で目が見えなくなった老犬との暮らし方など。ちょっとの工夫で、飼い主もペットも楽になることがありますから」
ペットの介護に関する知識と経験が豊富なプロの手を借りるという選択肢があることも、いずれ訪れるかもしれないその日のために、心にとめておきたい。
介護の末にペットが亡くなると、飼い主がペットロスに陥る状況も少なくないと、前述の山口さんは感じている。
「全力を注いで世話をするペットがいなくなり、空虚な気持ちになるのかもしれません。2匹目を早めに迎えたケースでは、ペットロスになりにくい」
実際に、向井さん夫妻も、1年前にニコの弟分となる2匹目の犬サンサクを飼い始めた。「ニコの介護にばかり意識がいってしまうとき、『ボクもかまってよ』とアピールされると、気持ちがなごみます。ライバル心の強いニコは、サンサクが元気に走り回っていると、『私だってまだまだ走れるんだから』とばかりに追いかけたりして。2匹目の存在はリハビリにも一役買っているかも」
介護に疲れた飼い主の心を癒やしてくれるのもまた、ペットの力であるのかもしれない。
【働きながらペットの介護を成功させる5カ条】
●将来介護が必要になるケースがあると、覚悟して飼い始める
●ペットシッターや一時預かりサービスも利用
●会社にいても、スカイプの映像で容体を確認できる
●職場から近い場所への転居や転職も要検討
●介護できなくなった場合は、終生預かりをしてもらえる施設へ