解体までのカウントダウンが始まる現国立霞ヶ丘競技場。50年間、日本のスポーツ史を作ってきた「遺産」が生まれ変わろうとしている (c)朝日新聞社 @@写禁
解体までのカウントダウンが始まる現国立霞ヶ丘競技場。50年間、日本のスポーツ史を作ってきた「遺産」が生まれ変わろうとしている (c)朝日新聞社 @@写禁

 東京五輪のメーンスタジアムの建設計画が大幅に遅れている。設計作業が滞り、巨額予算に「税金の無駄遣い」の批判が相次ぐ。

「最初に予算1300億円でコンペを実施した以上、工事費の上限は1300億円だからね」

 昨年暮れ、国立競技場の建て替え計画を議題とする自民党の無駄撲滅プロジェクトチーム(PT)の会合が開かれ、座長の河野太郎衆院議員が、計画を進める独立行政法人の日本スポーツ振興センター(JSC)と文部科学省の担当者らに向かって吼(ほ)えた。

 2020年の東京五輪でメーンスタジアムとなる「新国立競技場」が世にその姿を現したのは、今から1年余り遡る12年11月7日のことだ。

 国際デザインコンペで選ばれたのは、英国建築家のザハ・ハディド氏の案だった。屋根の高さ約70 メートル、延べ床面積約29万平方メートルという壮大な建築物だ。当初、建て替え事業の予算は約1300億円だったが、ザハ案に基づいて試算すると、最大で約3千億円とはじき出された。

 大きく膨らんだ事業費にとどまらず、その巨大な躯体(くたい)が、都心の貴重な緑地空間である明治神宮外苑の歴史的景観を破壊する、という声が噴き上がった。東京体育館を設計した建築界の重鎮、槇文彦氏が計画再考を提言。新国立競技場の計画見直し論議に火を付けた。

 批判を受けて、JSCは、延べ床面積を約22万平方メートルに縮小した計画案をまとめ、事業費を1699億円(本体1395億円、周辺整備費237億円、解体費67億円)で収めた。

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