原爆ドーム外国人観光客は高い意識を持って平和記念公園にやってくる。原爆ドームが今も残っていることに驚き、広島平和記念資料館で「平和」に対して思いを新たにする人が多い(撮影/写真部・時津剛)
原爆ドーム
外国人観光客は高い意識を持って平和記念公園にやってくる。原爆ドームが今も残っていることに驚き、広島平和記念資料館で「平和」に対して思いを新たにする人が多い(撮影/写真部・時津剛)
被曝地蔵尊(撮影/写真部・時津剛)
被曝地蔵尊(撮影/写真部・時津剛)
胎内被爆者の三登浩成さん(左)はほぼ毎日原爆ドームの前に立ち、外国人観光客に広島の事実を伝える。原爆ドームすぐそばの、日本人があまり知らない被曝地蔵尊へも案内(撮影/写真部・時津剛)
胎内被爆者の三登浩成さん(左)はほぼ毎日原爆ドームの前に立ち、外国人観光客に広島の事実を伝える。原爆ドームすぐそばの、日本人があまり知らない被曝地蔵尊へも案内(撮影/写真部・時津剛)

 実は、広島は外国人にとって名だたる観光地らしい。5月に発表された世界最大の旅行サイト「トリップアドバイザー」の「外国人に人気の日本の観光スポット2013」の第1位が広島平和記念資料館だった。4位に「厳島神社」もランクイン。外国人には京都のほうが人気があると思っていたのだが、どうやらそうではないようだ。

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 やはり、外国人観光客のお目当ては広島平和記念資料館(平和記念公園)だ。日本人ならだれでも知っているが、それでも、外国人の視点でみれば、また新しい発見があるようだ。

 多くの人はまず原爆ドームへ向かう。ドームの前ではボランティアガイドたちが無料で原爆に関する様々なことを教えてくれる。外国人を担当する三登浩成さん(67)が案内してくれたのは、ドームの前の道の向こうにある西蓮寺の被爆地蔵尊と墓地だった。今も、68年前の8月6日当時のまま残る墓石や地蔵のリアルを目の前にして涙する外国人観光客は少なくないという。

 イタリア人クリエーター、ディエゴ・ピッチナートさん(30)もまた、旅行の一番の目的は資料館だったと話す。

「広島は学校で学んでからずっと興味があった。日本があの戦争から立ち直ったことに敬意を抱いている。戦争と原子爆弾の影響を知りたかった。資料館の中は、まるで教会のように静寂に満ちていたことに驚いた。日本人はアメリカを声高に非難するわけでもなく、展示が客観的だったのが非常に印象的だった」

 実際、多くの外国人観光客が「客観的な展示」という感想を抱くと同時に、だからこそ「自分はどうすればいいのかとすごく考えた」(デンマーク・17歳・学生)と思うようだ。

 スイス人のエンジニア、クリス・スタップフライさん(23)はこう語る。

「広島では自分が教科書で習ったことが実際どのくらいリアリティーがあるのか、みんな知りたいんじゃないかな。広島を体験したいんだと思う」

 広島を訪れる外国人の特色は、街を歩けばすぐに気づくが、圧倒的に白人が多いことだ。日本政府観光局の「訪日外客訪問地調査2010」のデータでは、欧州・北米・豪州からの旅行者78.3%を占め、広島は47都道府県のうちもっとも欧米系旅行者率が高い。県や市の観光課などによると、もともと広島とのつながりが強いフランスには県を挙げて売り込んでいること、豪州では平和教育が盛んであることなども大きいらしい。

AERA  2013年8月5日号